「一つ、先に言っておかなければならない事があります」
階段を上がった宵月が、二階の広い廊下を進みながら、唐突にそう切り出した。
久しぶりに見る蒼緋蔵邸の本館内部の様子を眺めていた雪弥は、何だろうと彼を見つめ返して、続く言葉を待った。
「今、蒼慶様は訪問されている方とお会いしている最中です」
「えッ」
驚いて立ち止まると、宵月が少し眉を寄せて、こちらを振り返ってきた。
「何か問題でも?」
「いやいやいや十分に問題でしょう。なんで来客中の兄さんのところに、僕らは向かっているんですか!?」
強めに上げた声が廊下に反響するのを聞いて、雪弥は一度口を閉じた。続いて、声を落として「これも兄さんの指示ですか?」と確認してみると、宵月が「はい」と頷き返してくる。
一体、兄さんは何を考えているんだ? 話している相手が、もし蒼緋蔵家の関係者だったら、実に嫌な鉢合わせになるじゃないか。
雪弥は、そう思って頭を抱えた。他の人間に知られないよう、こっそり話をつけて帰るつもりで前もって知らせまで出したというのに、来客があるとは予想外だ。このまま窓から出て逃走したくなった。
階段を上がった宵月が、二階の広い廊下を進みながら、唐突にそう切り出した。
久しぶりに見る蒼緋蔵邸の本館内部の様子を眺めていた雪弥は、何だろうと彼を見つめ返して、続く言葉を待った。
「今、蒼慶様は訪問されている方とお会いしている最中です」
「えッ」
驚いて立ち止まると、宵月が少し眉を寄せて、こちらを振り返ってきた。
「何か問題でも?」
「いやいやいや十分に問題でしょう。なんで来客中の兄さんのところに、僕らは向かっているんですか!?」
強めに上げた声が廊下に反響するのを聞いて、雪弥は一度口を閉じた。続いて、声を落として「これも兄さんの指示ですか?」と確認してみると、宵月が「はい」と頷き返してくる。
一体、兄さんは何を考えているんだ? 話している相手が、もし蒼緋蔵家の関係者だったら、実に嫌な鉢合わせになるじゃないか。
雪弥は、そう思って頭を抱えた。他の人間に知られないよう、こっそり話をつけて帰るつもりで前もって知らせまで出したというのに、来客があるとは予想外だ。このまま窓から出て逃走したくなった。