雪弥は、口の中でもごもごと言った。あの兄が仏頂面のまま、映画館で炭酸飲料を飲み、デパートで女子の買い物に付き合っている光景を、想像する事が出来ないでいる。
「でも、そうか。父さんとも少し話したかったんだけど……それなら仕方ないか。さくっと兄さんのところに行って、帰ろうかな」
「あら、すぐに帰るつもりなの? 急がないでもいいじゃない、雪弥君。私とお茶しましょうよ」
そう提案してきた亜希子を見つめ返して、雪弥は「そういうわけにはいかないんです」と続けた。
「長居はしないもりなので、兄さんに話をつけたら、さくっと帰ります」
「雪弥様。わたくしは許可されない限り車を出しませんし、ここにはレンタル車もありませんからね」
「自分の足で帰れるから、平気ですよ」
言葉を掛けてきた宵月に目を向けず、そう答えた時、「えぇ! お兄様すぐに帰ってしまうのッ?」という可愛らしい声が聞こえてきた。
雪弥は声の方へ目を向けたところで、リビング側の開かれた大扉からやって来る女性に気付いて、やや遅れて「久しぶり」と少し申し訳なさそうに声を掛けた。すると、彼女がこちらに向かいながら「もうっ」と肩を怒らせる。
「でも、そうか。父さんとも少し話したかったんだけど……それなら仕方ないか。さくっと兄さんのところに行って、帰ろうかな」
「あら、すぐに帰るつもりなの? 急がないでもいいじゃない、雪弥君。私とお茶しましょうよ」
そう提案してきた亜希子を見つめ返して、雪弥は「そういうわけにはいかないんです」と続けた。
「長居はしないもりなので、兄さんに話をつけたら、さくっと帰ります」
「雪弥様。わたくしは許可されない限り車を出しませんし、ここにはレンタル車もありませんからね」
「自分の足で帰れるから、平気ですよ」
言葉を掛けてきた宵月に目を向けず、そう答えた時、「えぇ! お兄様すぐに帰ってしまうのッ?」という可愛らしい声が聞こえてきた。
雪弥は声の方へ目を向けたところで、リビング側の開かれた大扉からやって来る女性に気付いて、やや遅れて「久しぶり」と少し申し訳なさそうに声を掛けた。すると、彼女がこちらに向かいながら「もうっ」と肩を怒らせる。