外と敷地内を隔てる第一の門扉の左右には、茂った森に半ば隠れるようにして、どこの戦争時代の名残だと言わんばかりの、数メートルの高さの塀が続いている。

 そこをしばらくずっと進むと、森の中とは思えない開けた場所に出る。そこは白いコンクリートの地面が広がる大庭園で、その先に蒼緋蔵邸の本館があった。

 改築改造を繰り返しながら、昔からその規模を拡大していった蒼緋蔵本邸は、まるで西洋の城を思わせる外観をしていた。本館は三階建てで、上に複数の尖塔も見える。
 巨大な城のように佇む建物正面には、時代の名残がある大窓が並び、大きな金細工の厚い玄関扉を持っている。手前には、客人が車から乗り降りするためのスペーが設けられており、広々とした正面玄関前は、公園かと目を疑う噴水や花壇が美しい。

「うわぁ……。相変わらず、家とは思えない豪華さだ……」

 下車した雪弥は、十数年ぶりに足を踏み入れた蒼緋蔵邸を見回して、うっかりそんな感想をこぼした。無駄にスペースの取られた広場の噴水では、像の白馬が今にも飛び立とうとしており、それを取り囲むようにしてある庭園も素晴らしい。