ふっと我に返って、雪弥は瞬きをした。五歳だった頃の事を思い返していた気がしたものの、自分が何を言ったのか記憶は曖昧だった。気のせいかと思い直して、バックミラー越しにこちらを切なげに睨みつけている宵月へと視線を返す。

「なんですか? 宵月さん」

 幼い表情で、雪弥はそう問い掛けた。

 掛ける言葉を用意していなかったのか、宵月が一度視線を正面へ戻した。しばらくしてから、バックミラー越しに再び雪弥と目を合わせる。

「カラーコンタクトなんて、いつからなさっているのですか?」
「ああ、これ? 随分と前からやっているけれど、見た事なかったっけ? あ、そういえば成人式の時は、ちょうど『仕事』途中でやっていなかったから……うん、黒にした方がいいかなぁと思って、つけているんですよ」

 なんだか目立つみたいで、と雪弥は首を捻って答える。そう実感した事は、今までは一度だってなかった。周りの人の瞳の色が、ほとんど茶色や黒だからといって、そこに碧眼の自分がいても普通だと思っていた。