「そのあとも、結構やらかしていると聞いたが」

 おおよそ、その被害を受けているのは、事情を知らない蒼緋蔵分家の幹部連中であるらしいが。

 とはいえ、元の一人称が出ているくらいだ、本音なのだろう。ナンバー1は聞きながら「ふむ」と、わざと思案顔で眉を寄せてやった。蒼慶らしくない唐突な切り出しと、脈絡のない話題ではあったが、なんとなく察して「それで?」と促す。

「長年をかけて屋敷に残す使用人を厳選した。母は途中で気付いたみたいだが、何も言わなかった。だから、ここにいる者達は一人だって雪弥を否定しない――青い目だと、不審を抱く者だってありはしない。アレが人見知りなところもあるだろうからと、宵月が気にかけて遠ざけてはいるが」

 脈絡のない話が、そこでプツリと途切れる。

 蒼慶がまた黙り込んだ。手元を見下ろす彼の反応を、ただナンバー1は待っていた。つまり何を訊きたいのか、という催促はしなかった。生まれ育った環境や立ち場もそうさせているのだろうと考えれば、仕方のない事でもあると思えたからだ。


「――……兄が、弟の心まで守りたいと思うのは、我が儘な事なのだろうか」


 ぽつりと、蒼慶が口の中で呟いた。

 ナンバー1は、窓の向こうに広がる夜空へ目を向けた。何があったのかは知らないが、プライドを下げてでも尋ねてしまうくらい、気にかける内容ではない。