チラリと視線をそらすのも彼らしくなくて、ナンバー1は眉を顰めた。彼が弟である雪弥の事を、『アレ』やら『ソレ』やらと呼ぶ事は知っているが、私事をこぼすのも中々ない事だ。なんとなく察して、つい、部下である雪弥と四歳しか変わらない彼に尋ねる。

「蒼慶、大丈夫か?」
「ああ、私はな」

 蒼慶は含むように答えて、薄らと乾いた笑みを浮かべた。けれど普段のような不敵な笑みは続かず、窓から見える風景に目を留めて黙り込む。

 しばしナンバー1は、雪弥と違って男性的な太さのある、その美麗な横顔を眺めていた。十分な間を置いてから、再び口を開いた。

「人を撃ったのは、初めてだったか」

 問い掛けられてすぐ、蒼慶が「ああ」と答えた。自己嫌悪するように眉根を寄せたが、そんなことはどうでもいい、と顔を顰めて肘掛に拳を落とした。

「ここは、アレが帰って来るべき家だ。だからここで、誰だろうとアレに殺さるわけにはいかなかった。――だというのに、このざまだ」

 蒼慶は、椅子をぎしりと鳴らし、まだ開かれていない本を睨みつけた。ぶつける当てもない苛立ちを浮かべる。机の上で組み合わせた手に顎を乗せると、忌々しげに言葉を吐き出した。