「その気持ちをストレートに顔面に出すんじゃない。ったく、なんでそういう部分は、兄弟そっくりなんだ? 下手に手が出せるわけがないだろうが。何せ、お前らだから平気なのであって、戦闘モード一色時に飛び込もうものなら、部下だろうと殺(や)られる。とくに雪弥の場合、射程距離内がかなり広いからな。それでいて、少しでも探知されようものならアウトだ」

 かなり緊急を要するものであり、尚且つ雪弥本人が許可している状況でない限り、だいぶ距離も離しての待機状態となっている。プライベート時だと、とくにそうだ。
 ナンバー1は、そう言い返して凶悪面を一層顰めた。蒼慶が再び『例の本』へと視線を向けるのを見て、驚きは無しか、と小さく息を吐いてから続けて問う。

「一通り説明は聞かせてもらったが、そもそも蒼緋蔵家の当主の帰宅予定は、大丈夫なんだろうな? さすがに、この状態での鉢合わせは御免だぞ」
「父は表十三家のところだ。あちらの次期当主に協力を頼んで、引き留めてもらっている。帰りは朝だ」

 蒼慶は、淡々と言葉を返した。これまでの蒼緋蔵家の、役職の歴史が書き記された本の表紙を意味もなくなぞる。

 しばし思案顔でいたナンバー1が、「まぁいい」と片手を振って、ソファに背を預けた。