「もはや話す余地、なし」
答えたその唇が、美麗な弧を描いた。ああ、コレは殺しても良いのだ。そう獲物を捉えた瞳が嬉しそうに見開かれて、両手の爪がギチギチと音を立てて伸びる。
紗江子が悲鳴を上げて、ワンピースドレスを翻した。その一瞬後「こんなはずがない」と叫んだ彼女の言葉は、鈍い音と同時にひしゃげて、切り離された首ごと宙を舞っていた。
まるで大型獣にでも切り裂かれたかのように、地面に大きな爪跡が打ち込まれた。巨大な柱の一部が、キレイな切断面を覗かせて抜け落ち、頭部を失った彼女の身体が『一瞬にしてバラバラと』崩れ落ちる。
あっという間の事だった。長い爪をしまった雪弥は、死体の前にゆらりと立ったところで、ぼんやりとした様子で宙を見やった。その瞳から、淡い光が消える。
蒼慶の腕から、大きな古い本が滑り落ちた。それに気付いて、雪弥は返り血が付いた頬を、僅かにそちらへと向けた。けれど視線を合わせず、赤く濡らした手を下げたまま力なく唇を開く。
「これが僕なんだよ、兄さん」
ぼんやりと考えながら、雪弥は力なく言葉を吐き出した。
答えたその唇が、美麗な弧を描いた。ああ、コレは殺しても良いのだ。そう獲物を捉えた瞳が嬉しそうに見開かれて、両手の爪がギチギチと音を立てて伸びる。
紗江子が悲鳴を上げて、ワンピースドレスを翻した。その一瞬後「こんなはずがない」と叫んだ彼女の言葉は、鈍い音と同時にひしゃげて、切り離された首ごと宙を舞っていた。
まるで大型獣にでも切り裂かれたかのように、地面に大きな爪跡が打ち込まれた。巨大な柱の一部が、キレイな切断面を覗かせて抜け落ち、頭部を失った彼女の身体が『一瞬にしてバラバラと』崩れ落ちる。
あっという間の事だった。長い爪をしまった雪弥は、死体の前にゆらりと立ったところで、ぼんやりとした様子で宙を見やった。その瞳から、淡い光が消える。
蒼慶の腕から、大きな古い本が滑り落ちた。それに気付いて、雪弥は返り血が付いた頬を、僅かにそちらへと向けた。けれど視線を合わせず、赤く濡らした手を下げたまま力なく唇を開く。
「これが僕なんだよ、兄さん」
ぼんやりと考えながら、雪弥は力なく言葉を吐き出した。