すぐ隣に、彼女に銃を向けたままの蒼慶が立っていた。彼は銃口の先で絶命した幼い少女の死体を見つめており、その険しい表情とは裏腹に、切れ長の瞳には悲痛さが浮かんでいた。
「兄さん、どうして――」
だって、殺すのは僕の役目なのに。
あなたがそんな顔をしてしまわないように、僕がアリスの最期を迎えさせるつもりでいたのに……――
そう言い掛けた思考が、こつん、という物音で不意にかき消えた。残っていた敵の気配を察知した瞬間、雪弥はぐるりと首を動かして、そちらに目を向けていた。
見開かれた碧眼が冷たい光を放ち、支柱から後ずさりした紗江子の姿を認める。目が合った途端に彼女が恐怖に身体を強張らせ、まるで化け物を見るかのようにひゅっと息を吸いこんだ。その様子に目を留めたまま、彼が弾丸のように地面を砕いて急発進する。
「待て雪弥! 彼女には話す余地がッ――」
弟を止めようとして、咄嗟に銃を手放した蒼慶の手が、空を掴んだ。肩越しに振り返りもせず、雪弥が瞳孔を開かせたまま「否」と答える。
「兄さん、どうして――」
だって、殺すのは僕の役目なのに。
あなたがそんな顔をしてしまわないように、僕がアリスの最期を迎えさせるつもりでいたのに……――
そう言い掛けた思考が、こつん、という物音で不意にかき消えた。残っていた敵の気配を察知した瞬間、雪弥はぐるりと首を動かして、そちらに目を向けていた。
見開かれた碧眼が冷たい光を放ち、支柱から後ずさりした紗江子の姿を認める。目が合った途端に彼女が恐怖に身体を強張らせ、まるで化け物を見るかのようにひゅっと息を吸いこんだ。その様子に目を留めたまま、彼が弾丸のように地面を砕いて急発進する。
「待て雪弥! 彼女には話す余地がッ――」
弟を止めようとして、咄嗟に銃を手放した蒼慶の手が、空を掴んだ。肩越しに振り返りもせず、雪弥が瞳孔を開かせたまま「否」と答える。