殺すなと指示してくる兄の言葉を、上手く理解する事が出来ない。とても冷静であるはずなのに、そう考えている自分にも小さな違和感を覚えた。
「いいか雪弥。私がいくまで、そこを動くな」
そう口にした蒼慶が、分厚い本を脇に抱えたまま走り出した。その後ろから宵月が続く。
雪弥はその声を聞きながら、変わり果てたアリスの様子を見つめていた。彼女は、確かにアリスだ。でも、どうしようもないじゃないか――このままにしておいても、どうせ死んでしまう。苦しい事が続く方が酷だろう。
「ねぇ、アリス。君は一体、どんな夢を見ているのだろうか……大丈夫だよ、痛みもなく一瞬で終わらせるから」
己に言い聞かせるようにして、口の中で呟いた。はたして、それが正しいのかも分からない。迷う心が蘇って胸が締めつけられたが、その役目が果たせるのは自分だけだ。だから、ゆっくりと右手を持ち上げた。
不意に、至近距離で発砲音が上がった。アリスが心臓に弾丸を撃ち込まれて、大きく身体を痙攣させて絶命する。
雪弥は一瞬、何が起こったのか理解出来なかった。手の爪を戻しながら、ゆっくりと振り返った。
「いいか雪弥。私がいくまで、そこを動くな」
そう口にした蒼慶が、分厚い本を脇に抱えたまま走り出した。その後ろから宵月が続く。
雪弥はその声を聞きながら、変わり果てたアリスの様子を見つめていた。彼女は、確かにアリスだ。でも、どうしようもないじゃないか――このままにしておいても、どうせ死んでしまう。苦しい事が続く方が酷だろう。
「ねぇ、アリス。君は一体、どんな夢を見ているのだろうか……大丈夫だよ、痛みもなく一瞬で終わらせるから」
己に言い聞かせるようにして、口の中で呟いた。はたして、それが正しいのかも分からない。迷う心が蘇って胸が締めつけられたが、その役目が果たせるのは自分だけだ。だから、ゆっくりと右手を持ち上げた。
不意に、至近距離で発砲音が上がった。アリスが心臓に弾丸を撃ち込まれて、大きく身体を痙攣させて絶命する。
雪弥は一瞬、何が起こったのか理解出来なかった。手の爪を戻しながら、ゆっくりと振り返った。