爪がギチギチと音を立てて鋭利に伸びた。強い殺気を察知したアリスが、咄嗟に枝を地面に突き立てて空中で止まった時、銀色の煌めきと共に彼の右手が振るわれて、ひゅっと風を切る音を上げていた。
切断音は、ひどくあっさりしたものだった。紙でも切ったかのようなキレイな切り口を見せて、華奢な指先から切り離された枝が、ぱらぱらと落下していく。
アリスが、短くされた両手の枝を見て「え」と声を上げた。自身の目でさえ視識出来なかった一瞬の出来事に、何が起こったのかすぐには呑み込めない様子で、問うような目を雪弥へと戻しながら、背中から落ちていく。
落下していく彼女の金髪が、ふわりと宙に広がった。牙を覗かせる花弁のような小さな唇が、罵倒を浴びせるように大きく開いていく光景が、雪弥の目にはスローモーションのように映っていた。
――彼女を傷つけたくない。今は別人格とはいえ、あの子はアリスで……。
けれど心音は煩いほど高鳴り、全身の血流が激しく波打って周りの雑音を消し去っていた。落ちていくアリスの姿を前に、頭の中が痺れるような興奮に真っ赤に染まるのを感じた。全身が一つの強い衝動に疼き、両足にぐっと力が入る。
殺したい。赤い血を流す『彼』のさまがみたい。
切断音は、ひどくあっさりしたものだった。紙でも切ったかのようなキレイな切り口を見せて、華奢な指先から切り離された枝が、ぱらぱらと落下していく。
アリスが、短くされた両手の枝を見て「え」と声を上げた。自身の目でさえ視識出来なかった一瞬の出来事に、何が起こったのかすぐには呑み込めない様子で、問うような目を雪弥へと戻しながら、背中から落ちていく。
落下していく彼女の金髪が、ふわりと宙に広がった。牙を覗かせる花弁のような小さな唇が、罵倒を浴びせるように大きく開いていく光景が、雪弥の目にはスローモーションのように映っていた。
――彼女を傷つけたくない。今は別人格とはいえ、あの子はアリスで……。
けれど心音は煩いほど高鳴り、全身の血流が激しく波打って周りの雑音を消し去っていた。落ちていくアリスの姿を前に、頭の中が痺れるような興奮に真っ赤に染まるのを感じた。全身が一つの強い衝動に疼き、両足にぐっと力が入る。
殺したい。赤い血を流す『彼』のさまがみたい。