兄達がこちらを目で追いながらも、自信たっぷりな表情で『終わるのを待っている』紗江子を確認している様子も、先程からずっと見えてはいた。あちらまで被害が出ないように、逃げ続けているからである。

 けれど、これ以上は引き延ばせない。

 もう何度目かも分からない着地を柱の側面にしたところで、雪弥は神妙な顔でアリスを見つめ返した。向かってくる彼女が「とうとうやる気になったか!」と赤い目を見開いて、笑いながら己の凶器を振るってくる。

 その一瞬、雪弥の中で、時間の流れがゆっくりになった。先程から脳裏に繰り返されている、つい数時間前まで緋菜と笑い合っていたアリスの姿が、またしても浮かんでいた。

 それを思い返しながら、手に持っていた銃を離した。変わり果てた目の前のアリスから、一度だけそらすように目を伏せ、カチリと意識を切り替える。

 直後、雪弥は碧眼を見開いて、真っ直ぐ彼女を見据えていた。一瞬にして殺気に研ぎ澄まされた目が、凍えるような青い光を煌々と帯びて、襲い来る攻撃を捉える。