思ったままそう口にしながら、雪弥は窓の外へ目を向けた。
「それに僕は、父さん達みたいに喜べないんですよ。正直、ここへ来る事も出来る限り避けていたのに。こうやってて屋敷に足を運ぶ事で、父さん達の立場がぎくしゃくするんじゃないかって思うと……なんだか嫌だなぁ」
ぽつりと、本音が口からこぼれ落ちた。言いながら脳裏に思い起こされたのは、蒼緋蔵家に頻繁に訪れている分家の大人達の事だった。
高級スーツに身を包んだ男達が、幼い自分と母の紗奈恵を見ると、まるで汚物を見るかのように顔を顰める。そのたびに張り詰めたような心地悪い空気が流れて、繋いでくれていた母の手が少し強張ったのを、雪弥は覚えていた。
紗奈恵はいつも「大丈夫よ、雪弥。大丈夫だから」と、自分に言い聞かせるような口調で言って、よく幼い雪弥を抱き締めた。
けれど、姉と慕っていた亜希子にだけは、自身の悩みを打ち明けてもいた。屋敷に訪問した際、二人きりの時間を作って「やっぱり私達、一緒に暮らすことなんて無理なのね」と泣いていたのを、雪弥は何度か見てもいた。
「それに僕は、父さん達みたいに喜べないんですよ。正直、ここへ来る事も出来る限り避けていたのに。こうやってて屋敷に足を運ぶ事で、父さん達の立場がぎくしゃくするんじゃないかって思うと……なんだか嫌だなぁ」
ぽつりと、本音が口からこぼれ落ちた。言いながら脳裏に思い起こされたのは、蒼緋蔵家に頻繁に訪れている分家の大人達の事だった。
高級スーツに身を包んだ男達が、幼い自分と母の紗奈恵を見ると、まるで汚物を見るかのように顔を顰める。そのたびに張り詰めたような心地悪い空気が流れて、繋いでくれていた母の手が少し強張ったのを、雪弥は覚えていた。
紗奈恵はいつも「大丈夫よ、雪弥。大丈夫だから」と、自分に言い聞かせるような口調で言って、よく幼い雪弥を抱き締めた。
けれど、姉と慕っていた亜希子にだけは、自身の悩みを打ち明けてもいた。屋敷に訪問した際、二人きりの時間を作って「やっぱり私達、一緒に暮らすことなんて無理なのね」と泣いていたのを、雪弥は何度か見てもいた。