「雪弥様、そこに、いるの? それとも、私、まだ夢を見ているの?」
「アリスちゃん……?」
「真っ暗で、何も見えないわ。お母様、怖い、どこにいるの?」
今にも泣きだしそうな表情を浮かべたアリスが、助けを求める眼差しを動かせる。口から更に唾液が滴り落ちて、苦しい、お母様、と別人のような低い声がこぼれた。
見るに耐えきれず、蒼慶が「おい」と低く紗江子を威圧した。
「一体、お前達の言う『特殊筋』とは、なんだ? そんな子供を、無理やり殺人者にするくらいの事なのか。そもそも、この本を必要としているのは何故だ? 何か知りたい事があるからこそ、これを奪おうとしているのだろう?」
「質問ばかりねぇ」
紗江子がそう言いながら、面倒そうに蒼慶へ視線を返した。
「どうせここで消えてもらうから教えてあげてもいいけど、『あの方』は、いつの時代も私達を追い込んできた三大大家と、表十三家に今度こそ邪魔をさせたくないと考えている。そして、唯一の天敵となりうる蒼緋蔵家の『秘密』を求めているの。その本にヒントがあるのなら、とおっしゃっていたけれど、ほんと今更何を一体知りたいのかしら――」
そう口にした紗江子は、よろよろと近づいてきたアリスが、縋るようにスカートを握り締める様子へ目を向けた。ふんわりと微笑みかけると、その頭を撫でながら続ける。
「アリスちゃん……?」
「真っ暗で、何も見えないわ。お母様、怖い、どこにいるの?」
今にも泣きだしそうな表情を浮かべたアリスが、助けを求める眼差しを動かせる。口から更に唾液が滴り落ちて、苦しい、お母様、と別人のような低い声がこぼれた。
見るに耐えきれず、蒼慶が「おい」と低く紗江子を威圧した。
「一体、お前達の言う『特殊筋』とは、なんだ? そんな子供を、無理やり殺人者にするくらいの事なのか。そもそも、この本を必要としているのは何故だ? 何か知りたい事があるからこそ、これを奪おうとしているのだろう?」
「質問ばかりねぇ」
紗江子がそう言いながら、面倒そうに蒼慶へ視線を返した。
「どうせここで消えてもらうから教えてあげてもいいけど、『あの方』は、いつの時代も私達を追い込んできた三大大家と、表十三家に今度こそ邪魔をさせたくないと考えている。そして、唯一の天敵となりうる蒼緋蔵家の『秘密』を求めているの。その本にヒントがあるのなら、とおっしゃっていたけれど、ほんと今更何を一体知りたいのかしら――」
そう口にした紗江子は、よろよろと近づいてきたアリスが、縋るようにスカートを握り締める様子へ目を向けた。ふんわりと微笑みかけると、その頭を撫でながら続ける。