問われた直後、桃宮が弾かれるように顔を上げた。使命を果たさなければというようにしっかり拳を構え直すものの、切羽詰まった様子ですぐに言葉も出ないのを見て、蒼慶が「やはりそうか」と言い、皮肉だと語るような冷笑を浮かべた。

「それは、『特殊筋』と何か関係があるか?」
「煩い!」

 桃宮が怒鳴り返した。特殊筋という言葉に反応した彼は、「私はやらなければいけない」と震える声を上げながらも、やはり今にも泣き出しそうな目をしていた。

 それほどまでに『特殊筋』という言葉は、特別な意味を持つモノなのだろうか。彼が知っている『特殊筋』とは一体なんだ、わざわざ銃を兄に向けさせるほどの事なのか? そう思って、雪弥はつい尋ねてしまった。

「桃宮さん、僕は一族の事だって、よくは知りません。あなたを怯えさせている『特殊筋』という言葉は、あなたにとって一体なんなのですか?」
「わ、分からないんだ。私にも『よく分からない』んだよ。突然現れて、あ、あんな……」