その様子をじっと見据えながら、蒼慶が続けて訊いた。
「あなたは、こんな事をする人間ではないはずだ。それとも、誰かに唆(そそのか)されたか?」
「ち、違うッ。私には家族がいるんだ! 守るべきッ、家族が!」
桃宮が唐突に喚いて、銃を両手で構えた。力が込められた手によって震えが抑えられ、向けられている照準が定まったのを見た雪弥が、咄嗟に身構えると、彼が肩をビクリとさせて「動くな!」と叫んできた。
そのような脅しが効くはずがない。『発砲される前に首を落とす』自信はあったし、たとえ先に発砲されたとしても、兄とその執事に当たる前に『爪で斬ればいい』のだから。
これといって警戒心も動かされなかった雪弥は、そもそも何故、自分がその指示に従わなければならないのだろう、とぼんやりと思ってしまった。よく分からないが、『不快である』『貴様にそのような権限はないはずだが』という、冷やかな感想が胸に浮かんだ。
指示を仰ぐようにして、蒼慶にチラリと目を向けた。視線を返してきた彼の目に『まだ待て』という意思を見て取ると、込み上げる口調のまま「承知した」と答えてから、桃宮へと視線を戻した。たったそれだけで、不思議と少し落ち着いた。
「あなたは、こんな事をする人間ではないはずだ。それとも、誰かに唆(そそのか)されたか?」
「ち、違うッ。私には家族がいるんだ! 守るべきッ、家族が!」
桃宮が唐突に喚いて、銃を両手で構えた。力が込められた手によって震えが抑えられ、向けられている照準が定まったのを見た雪弥が、咄嗟に身構えると、彼が肩をビクリとさせて「動くな!」と叫んできた。
そのような脅しが効くはずがない。『発砲される前に首を落とす』自信はあったし、たとえ先に発砲されたとしても、兄とその執事に当たる前に『爪で斬ればいい』のだから。
これといって警戒心も動かされなかった雪弥は、そもそも何故、自分がその指示に従わなければならないのだろう、とぼんやりと思ってしまった。よく分からないが、『不快である』『貴様にそのような権限はないはずだが』という、冷やかな感想が胸に浮かんだ。
指示を仰ぐようにして、蒼慶にチラリと目を向けた。視線を返してきた彼の目に『まだ待て』という意思を見て取ると、込み上げる口調のまま「承知した」と答えてから、桃宮へと視線を戻した。たったそれだけで、不思議と少し落ち着いた。