「殺すつもりはないんだ。わたしは……私は、その本さえ手に入れば、それでいいんだよ」
そう告げる声は、心の底から恐れをなして震えていた。こちらに向けられている桃宮の銃口も、さらにガチガチと音を立てて震えが強くなる。彼は可哀そうなほど震えながら、蒼慶を見つめて今にも泣き出しそうな顔をくしゃりと歪めた。
「――雪弥。まだ動くな」
背中に二人を置いたまま、いつでも反撃できるよう冷静に桃宮の様子を窺っていた雪弥は、後ろから蒼慶に小さな声で指示されて、ふと我に返ったように殺気を解いた。
そんな命令を出されるとは思っていなかったから、つい「へ」と口の中に言葉を落として、兄を肩越しにチラリと見てしまう。
蒼慶はこちらへ視線を返さないまま、それに気付かず更に数歩前へと足を進め始めた桃宮に、続けてこう問い掛けていた。
「桃宮前当主。これは一体『誰』の差し金だ?」
投げかけられた言葉を聞いた途端、桃宮の足がピタリと止まった。彼は武器を構えている立場でありながら、まるで審判を下す者を前にしたかのような表情で蒼慶を見つめ返すと、恐怖に顔を歪めてガチガチと歯から音を立てた。
そう告げる声は、心の底から恐れをなして震えていた。こちらに向けられている桃宮の銃口も、さらにガチガチと音を立てて震えが強くなる。彼は可哀そうなほど震えながら、蒼慶を見つめて今にも泣き出しそうな顔をくしゃりと歪めた。
「――雪弥。まだ動くな」
背中に二人を置いたまま、いつでも反撃できるよう冷静に桃宮の様子を窺っていた雪弥は、後ろから蒼慶に小さな声で指示されて、ふと我に返ったように殺気を解いた。
そんな命令を出されるとは思っていなかったから、つい「へ」と口の中に言葉を落として、兄を肩越しにチラリと見てしまう。
蒼慶はこちらへ視線を返さないまま、それに気付かず更に数歩前へと足を進め始めた桃宮に、続けてこう問い掛けていた。
「桃宮前当主。これは一体『誰』の差し金だ?」
投げかけられた言葉を聞いた途端、桃宮の足がピタリと止まった。彼は武器を構えている立場でありながら、まるで審判を下す者を前にしたかのような表情で蒼慶を見つめ返すと、恐怖に顔を歪めてガチガチと歯から音を立てた。