出入り口から現れたのは、一つの人影だった。その人物が地下空間に足を踏み込みながら、その手に持っていた銃口をこちらへと向けてくる。
「その本を、渡してもらおう」
三人に真っ直ぐ銃口を向けてきたその侵入者は、訪問客である桃宮勝昭だった。松明の灯かりに鈍く反射する銃をこちらへと向けたまま、やはり脅し側に回っても尚、その威厳もない気弱な表情が浮かぶ顔を、どこか悲痛に歪める。
どうしてあなたが、と雪弥は思った。これまで多くの『敵対者』を見てきたが、ここまで悪役に向いていない人間と対峙するのは、初めての事だった。
雪弥が見る限り、桃宮はこれから行う事への行為を思って、躊躇する心を隠し切れない様子だった。こちらを見据える目と指先からは、強い迷いを感じる。その銃口も、僅かに震えているのが、雪弥の目では視認出来てもいた。
「やはり、あなただったか。桃宮前当主」
どこか諦めに似た眼差しを向けて、蒼慶が想定範囲内だとでも言うような冷静さで口を開いた。桃宮が急くように歩き出しながら「仕方がないんだ」と言い、こちらから数メートルの距離に近づいたところで、足を止める。
「その本を、渡してもらおう」
三人に真っ直ぐ銃口を向けてきたその侵入者は、訪問客である桃宮勝昭だった。松明の灯かりに鈍く反射する銃をこちらへと向けたまま、やはり脅し側に回っても尚、その威厳もない気弱な表情が浮かぶ顔を、どこか悲痛に歪める。
どうしてあなたが、と雪弥は思った。これまで多くの『敵対者』を見てきたが、ここまで悪役に向いていない人間と対峙するのは、初めての事だった。
雪弥が見る限り、桃宮はこれから行う事への行為を思って、躊躇する心を隠し切れない様子だった。こちらを見据える目と指先からは、強い迷いを感じる。その銃口も、僅かに震えているのが、雪弥の目では視認出来てもいた。
「やはり、あなただったか。桃宮前当主」
どこか諦めに似た眼差しを向けて、蒼慶が想定範囲内だとでも言うような冷静さで口を開いた。桃宮が急くように歩き出しながら「仕方がないんだ」と言い、こちらから数メートルの距離に近づいたところで、足を止める。