ずっしりと重い大きなその本に被っていた白い埃が、ふわりと浮かび上がって流れていくのが見えた。吹き抜ける風は、隙間風にしては強いものだ。
やはり、この地下の空間は、随分と奥まで続いているらしい。雪弥はそう推測して、巨大な柱の向こうをチラリと見やった。続けてひゅうっと風が流れ込み、彼の灰色とも蒼色ともつかない髪を揺らす。
「いくつか、ここの他にも出入口がありそうですね」
「一族の中でも、出入りが限定されている箇所がいくつか存在しているとは、旦那様から伺っております。しかし、そちらについても、今すぐは教えられない『秘密』の一つのようです。次期当主となる事が確定してもなお、全ての情報を開示されない状況が、蒼慶様は歯がゆいとも感じていらっしゃるようです」
宵月が、手に取った本の表紙を、じっくりと眺めている蒼慶から目を離さないまま、そう相槌を打った。
一見してもかなり重そうな本の中身を、その場で少し確認しようとでも思ったのか、蒼慶が一旦片手に持ち直そうとした。しかし、諦めたかのように小さく息を吐くと、腰に押し付けるように左手に抱えて、踵を返してこちらに戻ってきた。
やはり、この地下の空間は、随分と奥まで続いているらしい。雪弥はそう推測して、巨大な柱の向こうをチラリと見やった。続けてひゅうっと風が流れ込み、彼の灰色とも蒼色ともつかない髪を揺らす。
「いくつか、ここの他にも出入口がありそうですね」
「一族の中でも、出入りが限定されている箇所がいくつか存在しているとは、旦那様から伺っております。しかし、そちらについても、今すぐは教えられない『秘密』の一つのようです。次期当主となる事が確定してもなお、全ての情報を開示されない状況が、蒼慶様は歯がゆいとも感じていらっしゃるようです」
宵月が、手に取った本の表紙を、じっくりと眺めている蒼慶から目を離さないまま、そう相槌を打った。
一見してもかなり重そうな本の中身を、その場で少し確認しようとでも思ったのか、蒼慶が一旦片手に持ち直そうとした。しかし、諦めたかのように小さく息を吐くと、腰に押し付けるように左手に抱えて、踵を返してこちらに戻ってきた。