扉から祭壇までは、数百メールは離れているだろうと思われた。前を進む雪弥を先頭に、高すぎる天井に吸い込まれるようにして、三人分の足音が反響する。
「父から『ここから先は次期当主のみ』と聞いている。念のため、お前達は入らないほうがいい」
祭壇まで十メートルほどの距離の床に、うっすらと赤いラインが引かれているのを見た蒼慶が、その手前で一度足を止めてそう言った。雪弥はそれをチラリと確認すると、肩をすくめて見せた。
「そうだね。父さんがそういうくらいだから、僕は待っている事にするよ」
「それでは、わたくしもここで待機していましょう。蒼慶様、どうかお気をつけて」
宵月が礼儀正しく頭を下げて、主人を見送った。
一つ頷いた蒼慶が、赤いラインを踏み込みえて先を進んだ。祭壇の段をゆっくりと上がっていくのを、雪弥は宵月と共に静かに見守っていた。
祭壇の段差を一段、二段と上がり、蒼慶は本を置くためだけに用意されているような石の台の前で立ち止まった。松明の灯りに照らし出された、苔が黒ずんだような色をした本の表紙を、しばし見据えてから手に取る。
「父から『ここから先は次期当主のみ』と聞いている。念のため、お前達は入らないほうがいい」
祭壇まで十メートルほどの距離の床に、うっすらと赤いラインが引かれているのを見た蒼慶が、その手前で一度足を止めてそう言った。雪弥はそれをチラリと確認すると、肩をすくめて見せた。
「そうだね。父さんがそういうくらいだから、僕は待っている事にするよ」
「それでは、わたくしもここで待機していましょう。蒼慶様、どうかお気をつけて」
宵月が礼儀正しく頭を下げて、主人を見送った。
一つ頷いた蒼慶が、赤いラインを踏み込みえて先を進んだ。祭壇の段をゆっくりと上がっていくのを、雪弥は宵月と共に静かに見守っていた。
祭壇の段差を一段、二段と上がり、蒼慶は本を置くためだけに用意されているような石の台の前で立ち止まった。松明の灯りに照らし出された、苔が黒ずんだような色をした本の表紙を、しばし見据えてから手に取る。