「仕掛けがあったらまずいと思うから、まずは僕から入ろうと思うけど、いいかな、兄さん?」

 すると、視線が合った蒼慶が「構わん」と許可してきた。だから雪弥は、ならばと辺りを窺いつつ、一番目に地下空間へと足を進めた。

 そこは、一つの立派な美術館が、すっぽりと入ってしまうほど広かった。両サイドに並ぶ巨大な柱は、目測でおおよそ六畳ほどの厚みを持ち、明かりの届かない闇に呑み込まれた向こう側からは、まだまだ奥に面積があると推測される風が吹き抜けている。

 そのおかげか、軽すぎる類の埃は積もっていなかった。地面は加工されて見事に真っ平らにされており、長年の風化や石砂などで変色してしまっているそこを足で擦ってみると、下に隠れていた柄が覗いた。

「何か、下に描かれているみたいだ」
「上もですよ」

 蒼慶と共に、雪弥の後に続くようにして内部へと踏み込んだ宵月が、特に表情も変えず遥か頭上にある天井を見上げる。そちらもまた風化がひどくて、そのうえ薄暗い事もあってか、何が描かれているのかまでは分からなかった。