これから開く扉の向こうを照らすように、宵月が電灯の位置をセットした。足元が震えるような音が再び小さく始まると、石の扉が少しずつ横へと寄り始め、その隙間から淡い光が漏れ始めた。

「――なるほど。どうやら、明かりは必要ないみたいですな」

 宵月が、そう呟いて電灯の光を切った。隙間から溢れ出した光りが、三人の足元を次第に大きく照らしだして、そこから湿った冷たい空気がこちらへと流れ込んできた。

 扉が完全に開ききると、その向こうには、地下とは思えないほどの広い空間が広がっていた。隣に立った蒼慶が眉を寄せる中、雪弥もこれまで見た事もないほどの規模を持った地下遺跡に、思わず口を開けて立ち尽くしてしまう。

 眼前に現れた地下空間には、扉から真っ直ぐ、側面に大きな松明の炎をつけた巨大な柱が、正面奥まで左右に列をなして、進むべき広い一本道を示していた。それは明かりの届かない暗闇の奥にもあり、まばらに続いているようだったが、全貌は見えないでいる。

「なんだ、ここは」

 話に聞いていたイメージとは、大きく違っていたらしい。蒼慶がそう呟いた時、宵月が「あちらをご覧ください」と言って、扉から一直線の位置にある奥を指した。