当時、結局現地ではずっと禁酒状態だったっけ、と雪弥は思い出して乾いた笑みを浮かべた。帰国して、ナンバー1に大爆笑されたのである。思い返してみると、遺跡関係でいい事は一つもなかったような気がする。


 どれくらい待っていただろうか。後ろの会話が途切れてしばらく経った頃、雪弥はカコン、カコン、という振動を感じて足元へと目を落とした。


 蒼慶が顔を持ち上げて、「何事だ」と警戒した声を上げる。

「まだ零時にはなっていないぞ」
「ですが、恐らくこの振動音からすると、仕掛けが動き出しているようです」

 宵月が、電灯を扉へと向けやった。壁や地面の向こうから沢山の音が連続して起こり始めるのを聞きながら、雪弥は石の扉から少し後退しつつ兄を見やる。

「昔のカラクリ仕掛けみたいだし、時刻も正確じゃないのかも。エジプトでもこんな感じだったし、このまま開きそうですよ、兄さん」

 その時、重々しい音と共に扉が奥へとずれた。小さな音の反響音がぷつりと途切れ、扉と壁の隙間から濃厚な埃が白く舞う。