これまでの仕事で、実際の遺跡に何度か踏み入った事がある。その中で、とあるアメリカ人教授の護衛任務を思い出した。

 いちいち仕掛けを発動させて「こんな風に侵入者を排除していたわけかッ」、「殺傷性能は百パーセントだな!」と興奮する変態教授には、大変迷惑をかけられた仕事だったのを覚えている。

 遺跡内で、追ってきた盗賊団と鉢合わせて、一人で相手もさせられた。それだというのに、必要だったから遺跡から運び出したはずの遺産を「ははは、うっかり盗られてしまったみたいだ」と笑顔で言われた時は、護衛対象であるはずの彼に殺意を覚えた。

 あの時、おかげでマフィアの本拠地にも乗り込むはめになったのだが、やっぱり冒険者願望の強い教授は仕事ばかり増やした。当時二十二歳だった雪弥は、敵に「少年がいます」「遺跡で邪魔した例の少年が」「あの少年を」と連呼された。そのあげく、町で出会った十六歳の少年には「同じぐらい?」と尋ねられ、酒場では「まだ若いんだからミルクでも飲んでな」と店主に言われてしまったのだ。