同じように足を止めた蒼慶が、やや顰め面を浮かべて「おい」と呼んだ。

「お前に、その資格がないなんて誰が決めた?」
「…………そんなの、少し考えてみれば、誰でも分かりますよ」
「私には分からんな。何故、お前だと駄目なんだ? ――おい、こっちを見ろ、雪弥」

 名を呼ばれて、考えないまま目を向けた。
 そこには、こちらをじっと見据えている美麗な兄の無愛想な面があって、その目には迷いがなかった。

「常に一番近くにいて、私を助けろ。どこにも遠くへ行くな。だからその役職に、お前を任命したい」

 その時、宵月が電灯を高く掲げて「お話は、一旦ここまでのようです」と言った。

「蒼慶様、雪弥様。どうやら蒼緋蔵家の聖域といわれている地下に、到着したようでございます」

 そう告げる声を聞いて、二人は彼が照らし出し覗きこむ視線の先へと目を向けた。そこはずっと続いていた階段の終わりで、数人の人間が立てるスペースと、随分古い石の扉があった。