性格に難があるとはいえ、雪弥は兄として一番に彼を尊敬してもいた。幼い頃、引き合わされて大人びた子だと感じた彼が、子供らしい悔しさを滲ませて、しっかり自分の手を引っ張って守ってくれたあの時の姿が、今も目に焼き付いている。


『あんな奴らの話は気にするな。誰がなんと言おうと、お前は俺の弟だ』


 彼の弟なんだと実感させられて、嬉しくなって、そして憧れた。いつか立派な当主になるのだと口にしていて、それを全力で応援しようと思った。

 だからこそ、そばにはいられない。

 雪弥は、自分が限られた事しか出来ないと知っていた。壊すこと、殺すこと、邪魔者を排除してやること……それだけでは右腕として力になれない。たとえば宵月のような優秀な誰かがそばに就いて、仕事のアドバイスをしたり意見をしたりするべきだろう。

 そう考えながら、つい足を止めてしまっていた。自分の性分を思うと、近くに、ましてや隣にいるべきではないように思えて、普段から疑問にも思わず『仕事』をこなしている自分の白い手を見下ろした。