蒼慶はそう語ったところで、「とはいえ」と吐息混じりに言葉を挟んだ。話を聞かされた当時を思い返すように、宵月が照らし出している足元の階段を見つめながら言う。
「産まれる子について、一族内で立ち場的権利を求めない事を、彼女が約束したにもかかわらず、反対する連中があまりにも多かった。彼女と胎児の身の危険を感じた父は、最悪の事態を回避するためにも、紗奈恵さんの案を受け入れて『蒼』の字は入れなかったらしい」
雪弥は、とんでもない一族だなぁと思ってしまった。名前だけで『危うい判断に出る輩』が現れる可能性まであるとか、庶民思考で育った自分には考えられない事である。
「ただの名前一つで、変な人達ですね」
「昔からの風習だ。一族の古株連中の中には、重きを置いている奴らもいる」
蒼慶が、そうとだけ口にした。すると後ろから、宵月が「今でも、各名家で独自の名称などが残っているのと同じですよ、雪弥様」と説明した。
「産まれる子について、一族内で立ち場的権利を求めない事を、彼女が約束したにもかかわらず、反対する連中があまりにも多かった。彼女と胎児の身の危険を感じた父は、最悪の事態を回避するためにも、紗奈恵さんの案を受け入れて『蒼』の字は入れなかったらしい」
雪弥は、とんでもない一族だなぁと思ってしまった。名前だけで『危うい判断に出る輩』が現れる可能性まであるとか、庶民思考で育った自分には考えられない事である。
「ただの名前一つで、変な人達ですね」
「昔からの風習だ。一族の古株連中の中には、重きを置いている奴らもいる」
蒼慶が、そうとだけ口にした。すると後ろから、宵月が「今でも、各名家で独自の名称などが残っているのと同じですよ、雪弥様」と説明した。


