「兄さんって、そもそも迷子になるイメージがないんですが……」
「同行している貴様に、代々守られて受け継がれている地下空間の『壁』を、強行突破で破壊されるのを、私は懸念しているんだ」

 何故か、ギロリと睨まれてしまった。雪弥は反射的に降参のポーズを取って「なんか、すみません」と、謝った。半ば話を聞いていなかったので、なんで怒られているのだろう、と思っていた。

 いつまで階段が続くのか分からない。まだしばらくは到着しないのか、こちらを見ていた蒼慶が「ふんっ、まぁいい」と、少し眉間の皺を浅くしてこう続けた。

「日中にも話し聞かせてやったが、途中だったし、お前はよく分かっていないだろう。我が三大大家について、もう少し掘り下げて教えてやる」
「えぇと、でも僕は蒼緋蔵家とは直接関わりがない身ですし、その、遠慮しておきます」

 まるで蒼緋蔵家の一員として、その情報を叩きこまれているようにも感じて、雪弥はそう答えた。そもそも面倒である。

 しかし、蒼慶が勝手に話し始めてしまっていた。