「その仕掛けとやらが発動した際、雪弥様はどう対処されたのですか?」
「え? ああ、僕はアレですよ。数メートルの大斧がスライドしてくるだけの仕掛けだったので、ひとまず普通に指で掴まえて、砕きました。ただ、せっかく現地の『仲間』に新調してもらったスーツだったのに、風圧でスーツの袖口が少し擦り切れてしまったんですよねぇ」
「…………なるほど、『普通に』……。それは、実に原始的な方法ですな」

 しみじみと口にする雪弥と、普通、という一般常識的な値について思案する宵月。そんな緊張感もない二人のやりとりを、背中の向こうで聞いていた蒼慶が「馬鹿か」と思わずこぼして、本題に戻すようにこう言った。

「閉じ込められる事はないが、父上が言うには、立ち入り禁止となっている場所も多く存在しているらしい。他の一部の場所については、当主の地位継承を受けた後に段階を踏んで『情報を継承』する決まりにもなっている。一度迷い込んだら、へたをすると本当に帰って来られなくなるかもしれん」