「まだ下るんですねぇ。あの凹み、均等間隔であるっぽいし、もしかして昔使われていた蝋燭置きだったりするのかな?」
「もしや雪弥様、わたくしが照らし出していない奥の方まで、見えていらっしゃる?」
「まぁ、暗視スコープには、あまり頼らないですね」

 問われた雪弥は、そちらの方を覗きこみながら答えた。尋ねた宵月が「かなりの性能のようで」と、自身より低い位置にある彼の頭を見下ろすと、蒼慶が呆れたようにして片手を振り、合図を出してからその階段へと足を踏み入れた。

「行くぞ。ついて来い」

 雪弥は辺りを窺いながら、蒼慶に続いて歩き出した。宵月が最後に足を踏み入れたところで、震えるような振動がして振り返ってみると、岩の扉が閉まるのが見えた。

「兄さん、僕ら閉じ込められちゃいましたね。でも大丈夫ですよ、多分一トンくらいでしょうし、あれくらいの岩なら壊せますから」
「馬鹿か、あっさりウチの歴史的な遺産の一つを破壊しようとするな。冗談を言っている暇があれば、足を動かせ」

 緊張もなく述べた雪弥に、蒼慶が肩越しに言って階段を降り始めた。