幼かった緋菜の計画は、いつも大人達にバレていた。星空を眺めている間も当然のように宵月がいたし、リビングでは温かいココアが用意されていて、子供達の星空観賞会が終わるのを両親が待っていたのである。

 彼女が、そこに疑問を覚えないのが不思議だった。『わぁ、ココア大好き!』と笑う隣で、雪弥と蒼慶は知らぬ振りをしてココアタイムも付き合ったのだが、全部口に出てるんだよなぁ……と二人は思っていた。妹の将来が少し心配だった。

 そんな頃を思い返していたら、蒼慶が「ようやく来たか」とスーツの胸ポケットから携帯電話を取り出した。どうやらメッセージでも入ったようで、それを確認するなり、嫌悪感を露わにして眉を顰めた。

「――やはり、そうか」

 蒼慶が、そう呟いて立ち上がった。宵月が静かに主人の動向を見守る中、雪弥は腰かけたまま、こちらを見下ろした彼を見つめ返した。気のせいか、兄の顔には、珍しくどこか悲しみが帯びているようにも思えた。