「おい、何をぶつぶつ言っている? そもそも彼らの仕事だ、邪魔をしてやるな」
「あれ? 僕が邪魔した感じになっているんですか?」
「目が合っただけで勝手に緊張して、謝罪するとは情けない。――わざわざ配慮して、人数を減らして人選もしているというのに、コレときたら」
「兄さんこそ、何をぶつぶつ言ってるんですか。珈琲に何か怨みがあるのか、っていう感じの怖い表情になってますけど、カップを睨んでどうしたの」
「私はお前に対して、この表情をしているんだ」

 敬語を外している時は、大抵本心からストレートに尋ねる場合である。

 そう知っている蒼慶は、言いながら形のいい額の隅にピキリと青筋を立てていた。再び雪弥へと視線を向けつつ、こう続ける。

「そもそも、何故カップを睨みつけていると解釈するんだ?」
「だって、あれやこれやと全部に機嫌を損ねる、難しい性格をしているじゃないですか」
「言っておくが、そんな性格をした覚えはない。それに昔から貴様が指摘している『怖い顔』とやらは、私の地顔だ」

 高圧的に睨み下ろす蒼慶に対して、緊張を忘れて雪弥がずけずけと物を言う。