「えぇと、その……なんか、すみません」

 どう対応すれいいのか分からなくなって、困ったすえ、口から出たのは謝罪だった。自分は客人ではなく、かといって家族以外からは、本家の一員として歓迎されていない身であるとは知っていたからだ。

 すると、声を掛けられた給仕の男が、慌てたように「いいえ、坊ちゃま」と言った。

「どうか謝らないでくださいませ。あなた様は、謝罪されるような事は何もしておりません」
「うーん、食器を下げさせるのも、そういえば悪いなぁと……」
「そんな事はございませんよ。これが、わたくしの仕事であります」

 仕事を増やしてしまっている、という申し訳なさから、雪弥は答えながら目をそらしてしまっていた。少し遅れて、ふと、坊ちゃまという慣れない呼ばれ方をされたんだが、と思考がそちらへと傾いて、呑気に首を傾げる。

 呆れたように秀麗な眉を寄せた蒼慶が、給仕の男の向こうにいる彼へ視線を投げた。