「雪弥様の胃袋のあたりには、確実にブラックホールか何かが――」
「わざわざそれ言うために覗きこんでくるなッ」

 んなのねぇよ! と続けて叱り付けた。話が全く通じてくれなくて、泣きたくなった。この席にいるの、正直もう嫌過ぎる。

 雪弥は、心外だと愚痴りつつも座り直した。再びケーキを口に運ぼうとしたところで、自分に向けられている蒼慶の視線に気付いた。目を向けてみると、兄の顔に「病気ではないのか」というような表情が浮かんでいて、どいつもこいつも、とイラッとした。

 そもそも雪弥は、あまり満腹というものを感じた事がない。腹が減らなければ、食べなくてもぶっ通しで戦っていられるし、差し出されればいくらでも食べ続けられるのも生まれつきだ。だから、それを自分で異常だと思った事は一度もない。

 兄弟は黙りこんだまま、互いの顔を怪訝そうに見つめ合っていた。宵月がしばらく見守っていると、二人の向かいに座っていた桃宮が、唐突に小さな笑い声を上げた。