五歳とは思えない台詞である。そのエピソードを聞いた時にも眩暈を覚えたが、けれど宵月から聞かされた話の方が、更にぶっ飛んでいた。屋敷内で一人迷子になっていたら、唐突に奴が現れて、前触れもなく語ってきたのである。

『初めてあの方にお会いした時、写真で見た以上の衝撃を覚えました。絶対に屈しない精神、蔑む眼差しで容赦のない拒絶を吐き捨てるお言葉には、身体の底から、震えるような嬉しさが込み上げたものです』

 こいつ、絶対マゾだ。

 そして、きっと、とんでもない変態……――いや、信じられないほどの変わり者であるに違いない。そう幼いながらに、雪弥が危機感を覚えた瞬間だった。


 どうやら、宵月は一回目の顔合わせを果たした後、執事に必要だと思われるあらゆる技術や知識などを習得していったらしい。幼い蒼慶に認めてもらうべく、その能力をアピールするため何年も蒼緋蔵邸に通ったようなのだが、一度だけ本気で、大激怒させた事があるのだとか。