雪弥は、間が抜けそうな表情で食事を口に運んだ。桃宮がアリスの相手を変わり、ワインをちびりちびり飲み出した緋菜のテンションが次第に上がって、母の亜希子とはしゃぎ始める様子をぼんやりと眺める。

 やっぱり母娘なんだなぁと、そんな事を思った。

 そんな馴染みのない風景が、心にポツリと影を落とす。そこに漂っている空気に、馴染めないという違和感を覚えて、雪弥はしばらく食事の席を傍観していた。

「雪弥様は、ワイン、あまりお好きではありませんの?」

 唐突に話題を振られ、箸に乗せていたジャガイモが滑って皿の上に落ちた。
 雪弥は、呆れつつも睨みつけてくる蒼慶の視線を感じて、紗江子にぎこちなく笑い返して「その、ちょっと苦手ですね」と社交辞令を口にした。そもそも、薬もアルコールもなかなか効かない体質なのだ。

「果実酒なんてどうかしら? わたくし、果実酒なども自分で作りますのよ」
「美味しいんなら、私も作ってみようかなぁ」
「甘いんなら、私も飲みたいなぁ」

 返答に困っていた雪弥の斜め向かいで、亜希子がのんびりと相槌を打って、同意した緋菜と揃って、ふわふわとした様子で笑う。