「ほら、このお酒、とても美味しいわよ? 雪弥君も飲んじゃいなさいよ」
「何度か言いましたけど、僕は遠慮しておきます」
「緋菜はどう?」
亜樹子はあっさり話を振る相手変えると、続いて緋菜にも日本酒を勧めた。彼女は母親譲りの美麗な顔を顰めると「私も、もう三回は言ったけど」と強く返した。
「日本酒は飲めないから、いらない」
「うふふふ~、むすっとした顔も可愛いわねぇ。さすが私の娘! 蒼慶は、うーん、まぁいっか」
亜希子が勧めもせず、続いて桃宮前当主へと目を向ける。
雪弥は、隣にいる兄の横顔にピキリと青筋が立つのが見えて、相変わらず扱いがすごい雑……さすが亜希子さん、と思った。
「桃宮前当主も、日本酒はいかがかしら?」
「ははは……、あの、実はお酒は控えているんですよ」
問われた桃宮が、困ったように言って、ぎこちなく笑った。すると紗江子が、夫をフォローするように切り出す。
「お医者様に、お酒の飲み過だと言われたらしいのよ。もともと、かなり飲む方でしたから。ほら、蒼緋蔵家の殿方って、皆様結構お飲みになられるでしょう?」
「あ~、確かにそうねぇ。親族が集まると、持ち込みで色々とお酒も集まりますわ」
亜希子が言いながら、思い出すように宙を見やる。それから、普段は夫が座っているであろう席の方へ目を向けると、視線を戻しながら「禁酒なんて辛いわねぇ」と、しみじみと口にする。その間、グラスを持った片手を少し上げて、給仕に酒を継いでもらっていた。
「何度か言いましたけど、僕は遠慮しておきます」
「緋菜はどう?」
亜樹子はあっさり話を振る相手変えると、続いて緋菜にも日本酒を勧めた。彼女は母親譲りの美麗な顔を顰めると「私も、もう三回は言ったけど」と強く返した。
「日本酒は飲めないから、いらない」
「うふふふ~、むすっとした顔も可愛いわねぇ。さすが私の娘! 蒼慶は、うーん、まぁいっか」
亜希子が勧めもせず、続いて桃宮前当主へと目を向ける。
雪弥は、隣にいる兄の横顔にピキリと青筋が立つのが見えて、相変わらず扱いがすごい雑……さすが亜希子さん、と思った。
「桃宮前当主も、日本酒はいかがかしら?」
「ははは……、あの、実はお酒は控えているんですよ」
問われた桃宮が、困ったように言って、ぎこちなく笑った。すると紗江子が、夫をフォローするように切り出す。
「お医者様に、お酒の飲み過だと言われたらしいのよ。もともと、かなり飲む方でしたから。ほら、蒼緋蔵家の殿方って、皆様結構お飲みになられるでしょう?」
「あ~、確かにそうねぇ。親族が集まると、持ち込みで色々とお酒も集まりますわ」
亜希子が言いながら、思い出すように宙を見やる。それから、普段は夫が座っているであろう席の方へ目を向けると、視線を戻しながら「禁酒なんて辛いわねぇ」と、しみじみと口にする。その間、グラスを持った片手を少し上げて、給仕に酒を継いでもらっていた。