「お話をしたかったのですが、残念です。当主と顔を合わせて話す機会は、最近ほとんどありませんでしたから。妻も、大変会いたがっていたのですよ」
「紗江子さんからも、そう伺いましたわ。実は先程、電話があったので確認してみたのですけれど、夜の帰宅も難しくなったみたいでして……朝まで帰れないようですわ」
そう答えた亜希子が、上品に笑って「おほほほほ」と声を上げた。しかし、その豪快な飲みっぷりのせいで、すっかり婦人仕草も効果を発揮しなくなっている。
実年齢の十三歳にしては、どこか幼い仕草でチマチマと食べるアリスの相手をしつつ、緋菜もチラチラと気になるようにして様子を窺っていた。彼女の席に置かれたワイングラスには、嗜む程度にしか飲まれていないので半分以上残っている。
「雪弥君、お酒は?」
「亜希子さん、酔ってますよね?」
何度目か分からない質問を受けた雪弥は、そうぎこちなく指摘した。飲む前となんら顔色も変わらないものの、彼女のテンションはやけに高い。「おほほほほ」と笑い声を前置きしたかと思うと、「酔ってないわよ~」と続けてくる。
「紗江子さんからも、そう伺いましたわ。実は先程、電話があったので確認してみたのですけれど、夜の帰宅も難しくなったみたいでして……朝まで帰れないようですわ」
そう答えた亜希子が、上品に笑って「おほほほほ」と声を上げた。しかし、その豪快な飲みっぷりのせいで、すっかり婦人仕草も効果を発揮しなくなっている。
実年齢の十三歳にしては、どこか幼い仕草でチマチマと食べるアリスの相手をしつつ、緋菜もチラチラと気になるようにして様子を窺っていた。彼女の席に置かれたワイングラスには、嗜む程度にしか飲まれていないので半分以上残っている。
「雪弥君、お酒は?」
「亜希子さん、酔ってますよね?」
何度目か分からない質問を受けた雪弥は、そうぎこちなく指摘した。飲む前となんら顔色も変わらないものの、彼女のテンションはやけに高い。「おほほほほ」と笑い声を前置きしたかと思うと、「酔ってないわよ~」と続けてくる。