「前向いて下さい宵月さん」
「相変わらず、ストレートに失礼な事を申されますな。大変結構でございます」
「やめろ、僕にまでそんな目を向けるな」
「おや、本気のドン引きでございますな。その表情、幼い頃と変わりませんね」
そう言いながら、前に向き直った宵月の身体がクツクツと揺れる。顔面に感情が表れていないせいで、後ろから見てもシュールな光景である。
雪弥は、ついゴクリと息を呑み込むと、彼の後ろ姿を見つめたまま、隣の兄の方へ両手を伸ばしつつ尋ねた。
「…………兄さん、あのさ。それで桃宮さんの事だけれど」
「話をそらすのが下手だな。話題を戻すにしても、幽霊を見るみたいな目を宵月に向けたまま切り出すな。そして、こちらに助けを求める手を伸ばす癖も、直した方がいいぞ」
全く情けない、と蒼慶が言う。彼は、眉間にそんなに深くない皺を刻みつつ、自身の執事へと視線を投げた。
「お前も、あまりコレをからかうな」
「失礼致しました。あまりにもお変わりがないもので、成長が見られないお方だなぁと面白――残念に思いまして」
「おい、今のなんで言い直した? どっちも失礼極まりない感想ではないでしょうかッ」
チクショーこいつ、昔から兄さん以外、全部下に見ているところがあるんだよな!
しかもどうしてか、よくこちらにちょっかいを出してくる。幼い頃、驚かされた拍子や、嫌悪感覚える迫りっぷりに耐えきれず、力を加減しつつも何度もぶっ飛ばしてしまっていた。
「相変わらず、ストレートに失礼な事を申されますな。大変結構でございます」
「やめろ、僕にまでそんな目を向けるな」
「おや、本気のドン引きでございますな。その表情、幼い頃と変わりませんね」
そう言いながら、前に向き直った宵月の身体がクツクツと揺れる。顔面に感情が表れていないせいで、後ろから見てもシュールな光景である。
雪弥は、ついゴクリと息を呑み込むと、彼の後ろ姿を見つめたまま、隣の兄の方へ両手を伸ばしつつ尋ねた。
「…………兄さん、あのさ。それで桃宮さんの事だけれど」
「話をそらすのが下手だな。話題を戻すにしても、幽霊を見るみたいな目を宵月に向けたまま切り出すな。そして、こちらに助けを求める手を伸ばす癖も、直した方がいいぞ」
全く情けない、と蒼慶が言う。彼は、眉間にそんなに深くない皺を刻みつつ、自身の執事へと視線を投げた。
「お前も、あまりコレをからかうな」
「失礼致しました。あまりにもお変わりがないもので、成長が見られないお方だなぁと面白――残念に思いまして」
「おい、今のなんで言い直した? どっちも失礼極まりない感想ではないでしょうかッ」
チクショーこいつ、昔から兄さん以外、全部下に見ているところがあるんだよな!
しかもどうしてか、よくこちらにちょっかいを出してくる。幼い頃、驚かされた拍子や、嫌悪感覚える迫りっぷりに耐えきれず、力を加減しつつも何度もぶっ飛ばしてしまっていた。