「こんな事は言いたくないが、桃宮家が来たタイミングも気になる」

 近づいてくる階段の方を見ながら、そう口にして、蒼慶が思案気に眉を寄せる。
 雪弥は、そういえば何かを勘ぐっているようでもあったな、と彼が桃宮と話していた様子を思い返した。

「桃宮勝昭とウチの当主は、確かに交流はあったが、分家の中でも低い地位だった彼が、ここ十年で本家に足を運んだのは、二、三回ほどだ」
「そうなの? 結構、趣味となんとか話していませんでしたっけ?」
「貴様、碌に話しも聞いてなかったな?」

 ジロリと横目に睨み下ろされて、雪弥は「うげっ」と反射的に声を上げた。思わず口を手で塞いだものの、先頭を歩く宵月も肩越しに振り返って、「元より、当初から察知しておりました」と、いかつい顔に、ちょっと困ったような表情を浮かべる。

 がたいのいい屈強なおっさんが、そんな表情をしても、ちっとも可愛くない。雪弥は苦手意識もあって、つい手を小さく払ってこう言っていた。