すると、蒼慶が「ならばいい」と言って歩き出した。扉を開けた宵月のもとへと向かう彼に気付いて、雪弥は置いていかれないよう足早に隣に並んだ。

「私としては、話し合いの余地があるのなら、出来るだけ物騒な事は避けたいと考えてもいる」
「出来るだけ、という事は、それは低い推測の域なんですね」
「おい、残念そうな視線を向けてくるな。お前の緊張感のなさをそこからひしひしと感じて、苛々する」

 雪弥は、少し近い位置にある横顔を見ただけだったのに、ひどい言われようだと思った。二人の先頭を案内する宵月が「視線だけで表情が察せるようです」と、主人に同意した。

 一階へと向かいながら、蒼慶は何が起こるか分からないので、警戒するようにと二人に言った。宵月同様、雪弥も指示には絶対に従う事を要求されたが、元より兄の足を引っ張る気は微塵にもなかったので、時と場合によっては、という部分を意図的に省いてしっかりと約束した。