「――『【契約】は、約束通り果たされなければならない。この繰り返され続いている戦争の歴史に幕を降ろす為にも。そのために禁忌に手を出した、おお、なんという呪いのような因果か。今度こそ、全てを終わらせなければならないのだ』」

 そこで、蒼慶の言葉が途切れた。
 
 先代当主から直に受けた伝言と、忠告の全てはそれだけであるらしい。ますます謎だ。

 そう思って、雪弥は腕を組んで「うーん」と首を捻った。歴史と記録、という部分については、まるで今回の『開封の儀』とやらの事前忠告とも受け取れる。

「よく分からないなぁ。つまりお爺様は、今日何か起こるかもしれないと予見していたのかな、でもそれってどんな事なんだろう……約束の年というのも謎ですよね」
「私にも分からん。ただ、これまで賊の一人も許さなかった蒼緋蔵邸に、すでに侵入されて隠し扉の場所まで知られた。今夜の開封の儀が狙われているのは確かで、たとえ何者であろうと、それを奪われてはいけないという事でもあるんだろう」

 蒼慶はそう言って、視線をそらした。