「先代は、十三歳だった私を引き寄せて、こう言った。『定められた約束の年が、お前の代で来てしまうのではないかと、私は恐れている。我々の戦いは、まだ終わっていない。言い伝え通りにいくのなら、再び特殊筋が関わるような大きな争いが起こるだろう』――と」

 蒼慶が、口調を真似るように低く言葉を紡いだ。

「『いいか、蒼慶。お前には、あの碧眼を持った弟もいる。もしかしたら今の世だ。いずれお前が代を継ぐ事になったら、我ら蒼緋蔵家の歴史と記録を決して『奴ら』に奪われてはならんぞ。それは三大大家の中で、最大の禁忌と秘密でもあるからだ』」

「ウチの家が、禁忌……? 一体どんな秘密があるというんですか」

「そこは不明だ。相手方に知られたら不利になるような事とも受け取れるが、お爺様はあまり長々と話せる状況でもなかった。おかげで、疑問と謎が多い遺言になった。最後は意識も半ば朦朧とされていたが、私にこう言った」

 そう続けた彼が、真面目な顔で静かにこちらを見据える。