聞いていた話と違うと感じたし、寄越すんなら心の準備をさせろよ、と思っている間に、電柱やら建物やらを踏み台にして猛然と移動し続けていた。そして、走行する車を追い抜いて、ここまで自分の足で来てしまったのだ。
迎えに来たその人物は、長男である蒼慶が唯一認めた専属執事だった。父よりも少し年上なのだが、衰えを知らない筋肉質な長身で、背筋もピンと伸びており、年齢を感じさせない軍人のような鋭い瞳をしている。
実際彼は、執事になる直前まで、現役で活躍していた軍人だった。頭の切れもよく優秀なのだが、自ら望んで蒼慶の執事に就いた彼が、雪弥は苦手だった。当初から『ちょっと変な人……』という第一印象は抱いていたのだが、蒼緋蔵家の執事になった経緯を聞いて、余計に苦手意識が強まった。
その執事の名は、宵月。
エリート軍人であったらしい彼は、ある時、突然蒼緋蔵家に一つの連絡を入れたという。
『是非とも、わたくしを蒼緋蔵蒼慶様の執事にして欲しい』
亜希子を含め、家にいた全員が驚きを隠せなかったらしい。何故なら、それは雪弥も緋菜もまだ生まれていない当時の話で、蒼慶はたったの三歳だったからである。
迎えに来たその人物は、長男である蒼慶が唯一認めた専属執事だった。父よりも少し年上なのだが、衰えを知らない筋肉質な長身で、背筋もピンと伸びており、年齢を感じさせない軍人のような鋭い瞳をしている。
実際彼は、執事になる直前まで、現役で活躍していた軍人だった。頭の切れもよく優秀なのだが、自ら望んで蒼慶の執事に就いた彼が、雪弥は苦手だった。当初から『ちょっと変な人……』という第一印象は抱いていたのだが、蒼緋蔵家の執事になった経緯を聞いて、余計に苦手意識が強まった。
その執事の名は、宵月。
エリート軍人であったらしい彼は、ある時、突然蒼緋蔵家に一つの連絡を入れたという。
『是非とも、わたくしを蒼緋蔵蒼慶様の執事にして欲しい』
亜希子を含め、家にいた全員が驚きを隠せなかったらしい。何故なら、それは雪弥も緋菜もまだ生まれていない当時の話で、蒼慶はたったの三歳だったからである。