それは青い子鬼で、逃げ惑う『着物の人間』と同じ背丈くらいだった。先の『鼠の顔をしたモノ』と同じく、腹だけが異様に膨れており、枯れ木に突き刺された裸の男が、苦痛の表情を凍りつかせたまま、四肢を彼らに削がれている。

 岩肌が覗く地面には、血溜りが多く見られた。バラバラになった女の肉が散乱し、腕が三本ある巨人に老婆が捕食され、人間の口を持った蛇のようなモノが、枯れ木に獣の腕を突き立てて、その口にすくい上げた赤子を喰らっている。

「一部の特殊筋の家系では、『人の形をしていない赤子』が生まれた場合、葬るという決まりが存在していたらしい。とはいえ、やはりその言葉の定義は曖昧だ。三大大家では、そういった奇病については触れておらず、秀でた武才や才能を持つ人間が生まれる家系を『特殊筋』と呼んでいた、と書き残されているにすぎない」

 もしかしたら、当主のみに継承される『歴史』の全貌が解ければ、明確な事も知り得る可能性はあるのかもしれない。しかし、今のところ、次期当主の身で調べられる範囲内を徹底的に洗い出しにかかっても、長年かけてようやくこの程度の情報だ――と蒼慶は言う。