「…………兄さん、これが多くあった名家が絶える前の、特殊筋と分類されていた家々が沢山あった戦乱時代に『本当にあった風景である』と、あなたはそう言いたいわけですか? そして、ここに描かれているモノが人間であると、そう言いたいのですか?」
「先程から、私はずっとそう言っている。そして、異形だのといわれ続けたコレらは、人の腹から生まれた者達で、由緒正しきどこかの一族の人間だ」

 雪弥と同じように、そのページを見つめたまま、蒼慶が囁くような声でそう答えた。
 

『生きたまま喰われる者あり。その光景、まさに地獄』


 作品名なのか。それとも描いた人物が、絵と共に残した言葉なのか。見開きのページいっぱいに印刷された絵の片隅には、そんな一文が添えられていた。

 描かれていたのは、大きな爪を持った巨大な『異形の生き物』だ。裂けた大きな口からは鋭い歯が飛び出し、衣切れと人間の皮が挟まっている。それは顔面の横に寄る小さな瞳を見開いて、嗤うような顔で、三本しかない指の長い爪を食いこませて人間の臓腑を喰らっている。その足元には、潜血を滴らせた子鬼の姿もあった。