すると、こちらの表情から言いたい事でも察したのか、説明を続けようとしていた蒼慶が、不機嫌そうに秀麗な眉を顰めた。「なんだ」と短く問い掛けてくるので、雪弥も現時点までの感想を含めて、こう簡潔に答えた。
「情報量が多いし、分からない事も多くて正直苛々します」
「直球ですな、雪弥様は。相変わらず、その辺は素直でいらっしゃる」
宵月が口を挟んだ。雪弥は、わざわざ腰背を屈めるようにして、こちらに耳を傾けてきた真顔の執事にイラッときて「離れろ」と、反射的に低い声を発していた。
「戦いで滅びに生き残った名家には、代々受け継がれている『自分達が見てきた戦いとその正しい歴史』が残されている。その詳細については当主のみに受け継がれ、決して表の世に出る事がないとか。そして、この絵も、その事実の『断片』にすぎない」
宵月と睨み合っていた雪弥は、そう聞こえてきた兄の声と、テーブルの上の本のページをめくる音に気付いて視線を戻した。そこにあった絵を見て、黒いカラーコンタクトをした目を、小さく見開く。
「情報量が多いし、分からない事も多くて正直苛々します」
「直球ですな、雪弥様は。相変わらず、その辺は素直でいらっしゃる」
宵月が口を挟んだ。雪弥は、わざわざ腰背を屈めるようにして、こちらに耳を傾けてきた真顔の執事にイラッときて「離れろ」と、反射的に低い声を発していた。
「戦いで滅びに生き残った名家には、代々受け継がれている『自分達が見てきた戦いとその正しい歴史』が残されている。その詳細については当主のみに受け継がれ、決して表の世に出る事がないとか。そして、この絵も、その事実の『断片』にすぎない」
宵月と睨み合っていた雪弥は、そう聞こえてきた兄の声と、テーブルの上の本のページをめくる音に気付いて視線を戻した。そこにあった絵を見て、黒いカラーコンタクトをした目を、小さく見開く。