「説は様々あるが、そういった一族には、外的な奇形、もしくは言葉を理解しないといった者が生まれたとされている。実際はどうだったのかは知らん。私が注目しているのは、特殊筋と呼ばれている一部の武家の名家に残された文書によると、そんな者達が『戦場に駆り出されていた』という記述だ」

「それは穏やかな話じゃないですね。そこに『捨てて』きたわけですか?」

「勘違いしているようだが、彼らは決して弱者ではなかった、とされている。つまり『殺される側』の戦士ではなかったという事だ。何せ、『人間の形をした恐ろしい化け物が、戦場を暴れているように見えた』という一文も残されているくらいだからな」

 とはいえ詳細は分からん、と蒼慶は言う。

 雪弥は、手足が伸縮し『痛覚に異常のある』先日の異形の戦闘相手を思い返していたから、疑問に疑問を重ねるような問いは返さなかった。兄が語った『心身的に異常を持った戦闘能力の高い標的』には、少なからずエージェントの仕事で遭遇した事が思い出されて、集中がチラリとそれてしまう