どれくらいそうしていただろうか。
一歩も動けず、ただ窓から吹き込む風を、ぼんやりと受けながら眺めていたら、扉の向こうから二組みの足音が近づいてまるのが聞こえてきた。
雪弥が振り返った目の先で、ノックもなしにその扉が開かれる。
「話がある」
目が合ってすぐ、この部屋の主である蒼慶が、相変わらず鋭い眼差しを向けてそう言った。その後ろで、宵月が静かに扉を閉めた。
※※※
雪弥は、蒼慶に指されてソファに腰を落ち着けた。宵月が扉の前に控え立つ中、兄が向かい側に腰を下ろすのを見届けた。
「我々のように古くから続く家系の中には、『特殊筋』と呼ばれ、分類されている一族がある。一部の文献の中では、その呼び名については『遺伝的な奇病持ちの血族』であったとも記されている」
組んだ足の上に手を置いてすぐ、蒼慶がそう切り出した。
雪弥は、聞き覚えのある言葉だと気付いて、つい「特殊筋?」と訊き返すように口の中で反芻していた。先日の学園任務で遭遇した、恐らくは同一人物だろうと推測される、新聞で見た『夜蜘羅』という男の写真を思い返してしまう。
一歩も動けず、ただ窓から吹き込む風を、ぼんやりと受けながら眺めていたら、扉の向こうから二組みの足音が近づいてまるのが聞こえてきた。
雪弥が振り返った目の先で、ノックもなしにその扉が開かれる。
「話がある」
目が合ってすぐ、この部屋の主である蒼慶が、相変わらず鋭い眼差しを向けてそう言った。その後ろで、宵月が静かに扉を閉めた。
※※※
雪弥は、蒼慶に指されてソファに腰を落ち着けた。宵月が扉の前に控え立つ中、兄が向かい側に腰を下ろすのを見届けた。
「我々のように古くから続く家系の中には、『特殊筋』と呼ばれ、分類されている一族がある。一部の文献の中では、その呼び名については『遺伝的な奇病持ちの血族』であったとも記されている」
組んだ足の上に手を置いてすぐ、蒼慶がそう切り出した。
雪弥は、聞き覚えのある言葉だと気付いて、つい「特殊筋?」と訊き返すように口の中で反芻していた。先日の学園任務で遭遇した、恐らくは同一人物だろうと推測される、新聞で見た『夜蜘羅』という男の写真を思い返してしまう。