「あっ。コラ雪弥君、逃げたら駄目よっ」
「他の馬、どうしてかお兄様に近づいてくれないのよねぇ……宵月さん、雪弥お兄様と馬を、迎えにいってもらってもいい?」
「――承知致しました」
「てめっ、宵月さん、今笑ってたな!?」
身体がクツクツ揺れてんぞッ、と雪弥が怒ったように言う。結局はあの後、合流する事になったようで、そこからは桃宮一家の声も上がっていた。
それは懐かしく感じるほど、ずいぶんと長く聞いていなかったようにも思える声だった。追い駆け出した宵月の「お任せ下さいませ」という呼び掛けと、「変な風に迫ってくるなよ!?」と言う雪弥の短い悲鳴が響き渡って、それに続くようにしてたくさんの笑い声が溢れている。
その様子を、蒼慶は静かに耳にしていた。ややあってから、眩しそうに青い空を見上げると、ゆっくりと噛みしめるようにして目を閉じて、形のいい唇を開く。
「……貴様がアレを連れ去ってから、アレは毎日毎日、貴様らの事ばかりだ」
『…………』
ナンバー1は、下手に慰めるような返事はしなかった。
「他の馬、どうしてかお兄様に近づいてくれないのよねぇ……宵月さん、雪弥お兄様と馬を、迎えにいってもらってもいい?」
「――承知致しました」
「てめっ、宵月さん、今笑ってたな!?」
身体がクツクツ揺れてんぞッ、と雪弥が怒ったように言う。結局はあの後、合流する事になったようで、そこからは桃宮一家の声も上がっていた。
それは懐かしく感じるほど、ずいぶんと長く聞いていなかったようにも思える声だった。追い駆け出した宵月の「お任せ下さいませ」という呼び掛けと、「変な風に迫ってくるなよ!?」と言う雪弥の短い悲鳴が響き渡って、それに続くようにしてたくさんの笑い声が溢れている。
その様子を、蒼慶は静かに耳にしていた。ややあってから、眩しそうに青い空を見上げると、ゆっくりと噛みしめるようにして目を閉じて、形のいい唇を開く。
「……貴様がアレを連れ去ってから、アレは毎日毎日、貴様らの事ばかりだ」
『…………』
ナンバー1は、下手に慰めるような返事はしなかった。